ナショナリズムとジェンダー 新版 (岩波現代文庫)

ナショナリズムとジェンダー 新版 (岩波現代文庫)の詳細

「帝国の慰安婦」の著者である朴裕河氏は、上野千鶴子氏からの影響を問われると否定するそうなのだが、これを読むと影響は明白である。理論的、いや屁理屈の部分は、ほとんど上野氏からそのまま引き継いでいると言ってよかろう。上野氏と悪罵を投げつけあう関係である秦郁彦氏は、自分で朴裕河氏と＝の立場だと述べているので、秦郁彦=朴裕河＝上野千鶴子という、三角関係が形成されているのかと思ってしまう。こりゃご当人どうしの問題なので、ここでは詮索しないが、慰安所の制度的な話になると、朴氏はほとんど秦郁彦氏と同じことを語っているので、秦氏の認識は間違っているわけでもない。で、上野氏の認識が秦氏と大きく異なっているかと言うと、そういうわけでもない。乱暴に言ってしまえば、秦氏の場合は戦地に公娼を連れて行って何が悪い、となるし、上野氏の場合は、戦地にまで公娼を連れて行ってとんでもない話だとなるのである。さすがに朴氏ほど内容スカスカではないが、朴氏の自信満々かつ被害者意識まるだしの発言と行動を見ると、その後ろ盾に日本のフェミニズム界の最大のスターがいると勘違いしているのかとすら思う。上野センセも罪作りなもんだ。私は図書館で借りてきたのだが、読んですぐに購入を決めた。いわゆる「朴裕河」現象に、上野氏がどう絡んでいたかを理解するのに必読の書である。明晰な文章なので、「帝国の慰安婦」のように、読みにくくはないが、「帝国の慰安婦」同様の違和感や怒りを感じる人は多いと思う。一応、私は「慰安婦」問題関係のレビューでは、マジメをモットーとし、おふざけキャラは封印しているのだが、最近の「朴裕河」現象については、バカバカしくて、シラフでは論じられない。自分でもこういうこと書いてなんだかなあと思うのだが、そのまま投稿してしまう。内容は３点しかつけられないが、だからこその必読書である。